台湾有事は日本有事 インパクト・フォーラム基調講演

2021年12月01日

「影響力論壇(インパクト・フォーラム)」基調講演『新時代の日台関係』


皆様こんにちは、安倍晋三でございます。
インパクトフォーラムを主催し、私をお呼びくださいました国策研究院、陳啓川先生文教基金会・当代日本研究学会の全ての関係者の皆様、中でも国策研究院董事長兼院長の田弘茂博士に心よりのの御礼を申し上げます。お呼びくださいましてありがとうございました。

初めに日本と台湾を取り巻く環境を私はどう見ているか、そこをお話ししたいと思います。次に中国に自制ある行動を促すにはどうすべきかを、お話しします。日本としてこの目的のため何をしてきたか、FOIPやQUADのことをご説明しまして、最後に今まさに生まれつつある幼子たちのため、「台湾よ、美しくあれ、麗しくあれ」と願うことで、お話を終えようと思っています。

さて時代と地域に対し、私の認識を申しあげます。日本と台湾がこれから直面する環境は、緊張をはらんだものとなるでしょう。こんな時は自由で開かれた民主主義の枠組に、自分たちをしっかりと結びつける、その努力を続けることが肝心です。後ほどお話ししますように、私はこの同じ考えから貿易や経済で、安全保障や外交で、日本の戦略空間を拡大しようと試みて参りました。同じ考えによりまして、私は台湾のTPP参加を支持いたします。ルールに基づく国際秩序を維持し、強くしていく上で、TPPの果たす役割は重要です。台湾にはその参加資格が十二分に備わっている。私はそう思います。
また医療、保険、気候変動、あるいは航空、通信、刑事犯罪予防といった分野は、あらゆる人にとって生き死にに関わる重大な関心対象です。だといいますのに、国際条理におけるこれら問題に対する発言権は何1つ台湾に認められておりません。本年2021年は、台湾がこのような状態になってからちょうど50年を数えた年でありました。皆様半世紀の長きに渡って、よくも隠忍自重を耐えてこられたと思います。WHOのオブザーバー資格など可能な分野から台湾はふさわしい発言権を手にしていくべきである、私はそのように考え、実践に向け支援を惜しまぬつもりであります。米国や欧州各国にも協力してもらわなくてはなりません。

さて、中国は軍事費の増大を続けてやみません。これまで30年の間に、中国の軍事費は42倍に増えました。日本の防衛予算に対して、今や4倍の規模に登ります。2049年に北京は政権樹立以来100周年を祝います。それまで30年近く、この間に経済や軍事費が年率7%近く伸びたといたします。そうなると経済も軍事費も、今の8倍になる。この先ひと世代にあたる30年こそは東アジアの、いえ世界の歴史にとって最も重要で危機に満ちた時代となります。私たちに対する中国のアクションは技術的に高度になり、複雑になって、それは平時と戦時の境目をますます曖昧なものとするでしょう。ドメインは宇宙空間に、サイバー空間に広がり、私たちが持つ社会インフラは常に危険にさらされると思っておく必要があります。台湾の周辺には、と言いますと、まあこれは尖閣諸島、先島、与那国島など日本の領土、領海には、と言っても同じことですが、空から海上、海中から、中国はあらゆる種類の軍事挑発を続けてくることも予測しておかなくてはなりません。
では日本と台湾はどうすべきでしょうか。台湾が取るべき政策に関して、何かを言うつもりはありません。ここでは1点、自由と民主主義、人権と法の支配という普遍的価値の旗を高く掲げて、世界中の人からよく見えるよう、その旗をはためかせる必要があるとだけ申し上げます。日本と台湾、共に務めましょう。民主主義は人の心の自発的なコミットメントを求める制度です。上から権力づくで強制するものではありません。民主主義はだから強い。私はそう考えます。

次に中国にどう自制を求めるべきか。そこをお話しいたします。私は総理大臣として習近平主席に会う度ごとに、尖閣諸島を防衛する日本の意志を見誤らないようにと言いました。その意志は確固たるものであると明確に伝えました。
尖閣諸島や先島、与那国島などは台湾からものの100km程度しか離れていません。台湾への武力進行は地理的、空間的に必ず日本の国土に対する重大な危険を引き起こさずにはいません。台湾有事、それは日本有事です。すなわち日米同盟の有事でもあります。この点の認識を、北京の人々は、とりわけ習近平主席は断じて見誤るべきではありません。世界中の人々にも、今一度この地域、海域の地図をとくと眺めて、今私が言いましたところを十分お分かりいただきたいと思っています。

世界の歴史は、戦争がいつどんな時に起こるか教えてくれます。自分の都合に合わせて相手の意志を軽視したり、誤解したりしますと、軍事的冒険に対するハードルが下がります。そうなるのを防ぐため、私たちは自分自身の能力を高め、確固たる意志を示していく必要があります。それと共に、日本と台湾そして民主主義を報じる全ての国々は、習近平主席と中国共産党のリーダーたちに、繰り返し、誤った道に踏み込むなと訴え続ける必要があるんだと思います。
軍事的冒険は経済的自殺への道でもある。中国は確かに巨大です。でも世界の経済に深い関係を持っていますから、台湾に軍事的冒険を仕掛けた場合、世界経済に重大な影響を及ぼさずにはいません。すなわち中国は深手を負うことになるのであります。私たちは経済力、軍事力を充実させ、力において決意を示し続けると同時に、理性の言語で中国に、自国の国益を第一に考えるなら、両岸関係には平和しかないということを繰り返し説いていかなければならないと思います。
私は総理大臣としての在任期間中、1つには日本の戦略的空間を広げるために、そして今1つには中国に理性ある行動を促すために、様々な策を取ってまりました。2012年の暮れに、二度目に総理大臣となった時、日本は自分自身の防衛力をしっかり上げなくてはならないと決意しました。それまでの10年間、日本はずっと防衛費を削減していた。これを反転させて、毎年防衛費を増やし今日に至ります。最新鋭のF35戦闘機を147機導入すると決め、配備が始まっています。スタンド・オフ・ミサイルを導入し、あるいは開発する一方、与那国島、宮古島にはすでに、陸上自衛隊が駐屯地を置いて絶対に譲らない決意を示しています。
このように自国を守る努力を続けてこそ、日米同盟が力を増します。私は政治的資本を相当に勝利したところでありますが、日本の存立に関わる場合、日本と米国は集団的自衛権を発動できるようにしました。また平時から米軍の飛行機や艦船は自衛隊が守れるように変えました。当たり前のことができるようにした。その実施件数は対外的に公表しています。年々着実に増えています。日米の共同演習は、20年前20回だったのが、昨年2020年には49回に増えました。これらを踏まえて、私は米国の議会で演説をした時、「日米同盟とは希望の同盟」だと言った訳であります。未来の世界、地域に平和と安全と人々の穏やかな暮しをもたす基盤こそ、日米同盟である、だから希望の同盟だと主張をいたしました。日米が大きな基軸をなす一方、私はインド太平洋という新しいコンセプトを打ち出して、まあこれは米国、豪州、インドなど世界中の色々な国が使うようになりました。ここにかかる民主主義のネットワーク、それがQUADです。米国は政権が変わっても、私の打ち出した構想を引き続き採用してくれた。そればかりか首脳レベルに押し上げてくれたことを、私は高く評価しています。これらは全てインド太平洋に、第1に航行の自由や法の支配、基本的価値の普及と定着を図りつつ、第2に基礎の高いインフラ整備を通じて連結性を高め経済的反映を追求するとともに、第3には海洋法執行能力の向上支援などを含む、平和と安全のための協力を、志を同じくし、価値観を共にする国々、人々と手を携えて進めていこうとするものであります。そして普遍的価値を重視する私たちにとって、台湾こそはキーストーンである、そのことを強調したいと思います。

皆様1度目を閉じて、真っ暗な状態、暗闇を思ってください。その状態を取り除くのにマシンガンは無力だと、私が尊敬するインドのモディ首相はかつて言ったことがあります。1本のロウソクがあればいい。そこに火を灯すキャンドルの灯り、それが民主主義だ、モディ首相はそう続けました。台湾の民主化は25年の歳月を経てきました。人が大人になる年月です。世界は台湾の民主主義における成熟を知る必要がある。経済力ではポーランドやスウェーデンに勝り、人口ではオランダよりも600万人多い。メルカトル図法に従って台湾を緯度の高い地域へ持っていくと、スコットランドやデンマークと台湾は大体同じ大さだと分かります。そんな台湾に根付いた民主主義を今から25年先、ちょうど生まれた赤子が大人になった時、もっと強くなった、確かなものになったと言えるようになっていたら素晴らしいではありませんか。そうなるよう努めることは、日本を含む自由と人権と民主主義そして法の支配を尊ぶ国々と国際社会の共通の責務であります。まずはWHOへの参加など台湾の国際的地位を一歩一歩向上させるお手伝いをしたい。強い台湾、伸びる台湾、自由で人々に人権を保障する台湾は日本の利益であります。世界全体の利益でもあるからであります。

以上を持って、私のキーノートといたします。ご清聴ありがとうございました。

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